阿蘇を大きく取り囲むようにある外輪山。そのど真ん中にある中岳の火口周辺に行ってきました!トレッキングしている最中、まるで違う惑星に迷い込んでしまったかのような広大な空間に出くわすなど、自然の雄大さにひたすら驚くばかり。
周辺にある名所「草千里」など、とにかくワープ感満載の阿蘇火口トレッキングは、想像以上に凄かったんです!
(Photo&Text/Hinata Yoshioka)
阿蘇の火口にレッツ・トレッキング
出発地点は、「阿蘇山西駅」。トレッキングなんてした事がないという人でも、ここなら心配要りません。私は無謀にもヒールのある靴で来てしまったのですが、そんなに難なく登れました。とは言っても疲れ具合が違うので、ベストは運動靴です!(当たり前ですが…)
登りの傾斜は比較的緩やか、山を大回りしながら歩くので「登山」でもなくホント「気軽なトレッキング」です。道もちゃんと舗装されていました。
登っていると色んな人達とすれ違います。老若男女、海外からの観光客の姿もあるようですね。元気に挨拶をすると皆さん笑顔で返してくれるので、道行くたびにどんどん楽しくなってきます。
正面を見上げると、頂上にモクモクと雲のようなものが沸き立っているのが見えました。なんでも、火口から立ち昇る湯煙りなんだとか。「なぜ煙ではなく湯煙りなのか」という疑問を抱きつつ、歩みを進めます。
こんなにも広いところにポツンと…
道中を更に楽しむために、私はお弁当を持っていきました。違う惑星に迷い込んだような広大な空間にポツンとある、こちらのベンチに座ってお昼休憩。大自然の懐に抱かれていると、私という存在の小ささを感じます。
目の前に広がる光景はどこまでも広く、この世界の果てしなさを実感できます。これは都会では味わえない気分です。こんな時間をじっくりと味わうことも、時には必要ではないでしょうか。
さて、スッキリ新しい気持ちでトレッキングを再開です。
少し進むと駐車場が見えてきます。そしてその向こうにそびえ立つのは、まるでグランドキャニオン?その周りを取り囲む道は万里の長城?といった壮大なスケールの光景が広がっていました。
ここは「砂千里ヶ浜」。長い道をのんびり歩くのも楽しいよと、昨日泊まった宿の人が教えてくれた場所です。
今回はゆっくり道を歩くことはできませんでしたが、時間がある方はぜひここも歩いてみてくださいね。
火口の中は赤いマグマ、ではなく…!
さらに歩みを進めると、展望台が見えてきました。どうやらあそこから火口と周りの景色を一望できるようです。それにしても火口周辺もかなりの異惑星感です。
大きな火口には、柵が遠くまで張り巡らされていました。ちらほらと湯煙が出ているその中を、おそるおそる覗いて見ると…
おお!想像とはちょっと違った光景がそこにありました。覗き込んだ火口には、赤いマグマではなくエメラルドグリーンの液体。
実はこの火口の中には、熱湯が湧いているのです。火山湖と呼ばれるそのお湯は、さながら超高温の温泉といったところでしょうか。もちろん浸かることは不可能ですが…さすが温泉天国の阿蘇ですね〜
そして事件が起こった!
美しさに見とれつつ、夢中になって写真を撮っているうちに、なんだか硫黄の匂いが強くなっていることに気がつきました。すると!
突然辺りに響き渡った警報音…そして緊急のアナウンス。「現在、人体に影響する毒ガスが発生しています。直ちに避難してください。」…マジですか!!
「やばい、逃げろ〜!」と言わんばかりに、全員出口へと向かって足早に歩いて行きます。みんなで惑星脱出だ!と言わんばかりの雰囲気です。
頂上まで車で来ていた人達は、車に乗って続々と下って行きました。徒歩の人も歩いて避難していきます。さっきまで満員だった頂上はあっと言う間にもぬけの殻です。
実はこのようなことが、一日に何度もあるそうです。風向きによって火山ガスの影響を受けるので、その時の風次第で状況が一変するんですね。
展望台までに到着する途中、石でできた円形の建物をいくつか見かけました。「惑星探検の映画みたい」とのんきに考えていましたが、実は災害発生時の避難場所だったのです。今日のような火山ガス発生だと下山となりますが、災害の状況によってはここに避難する、ということもあるのかもしれません。
行けるかどうかは火口のご機嫌次第
下山しながら振り返ると、頂上ではモクモクと湯煙りが立ち昇っていて、硫黄の匂いもまだ漂っています。じっと眺めていると、まるで生き物のように見えてきます。
今はフワフワした可愛い湯煙りですが、2016年の火口噴火の際には噴煙が1万1000メートルの高さに達したという話だから驚きです。
危険と分かっている時にはもちろん行きませんが、刻一刻と変化していく自然に触れ合う…きっとそれが、阿蘇の火口に行く醍醐味なのでしょうね。
近づけるかどうかは中岳のご機嫌次第というのも、逆にこの空間の稀有さを高めているような気がします。
火山は時として恐ろしいものにもなりますが、温泉という恵みを私たちに与えてくれる素晴らしい存在でもあります。そう思うとここに立っているだけで、感謝の気持ちがじんわりと湧いてきます。
どこまでも草の海が広がる「草千里」にも行ってきました
阿蘇の火口を満喫した後は、ここからほど近い場所にある大草原「草千里」に行ってみることにしました。
まずはバスで一駅先の「草千里ヶ浜」へ。道行く窓の外には、ススキの海が広がって黄金に輝いています。柔らかな穂の毛皮をまとった山並みは、眺めているだけで安らぎのひとときを与えてくれるなぁと、しみじみ浸っているうちに草千里ヶ浜へと到着しました。
バスから降りると、馬を発見!どうやらここでは乗馬を楽しめるようです。こんな雄大な景色の中で、しかも真近に中岳のパワーを感じながらの乗馬なんて、なかなか出来ない体験ですよね。
それにしても草千里とはよく言ったものです。本当にどこまでも続く草の海が目の前に広がっています。
この日は、あちこちで撮影大会が行われていました。皆さんどうやら、この風景をバックに面白写真や映像を制作している模様です。このロケーションなので、スケールのでかい作品に仕上がりそうですね。
日本のウユニ塩湖とも呼ばれている草千里の大きな池は、冬を前にして干上がってしまったのか、この日は小さめの水溜りになっていました。残念ですがまた雨が降って水が溜まるのを気長に待つしかないですね。これもまた、自然のものですから。
色々な表情をもつ、阿蘇の山々
草千里を出る頃には、馬たちが1日の仕事から解放されて山へ向かって帰っていく姿が見られました。馬たちもここで、野生のように伸び伸びと生活しているのですね。どことなく牧歌的な風景です。
帰りのバスの車窓からは、こんな素敵な景色を見ることができました。どの方角を見ても山の美しさを感じられるのは阿蘇ならでは。
阿蘇の美しい山並みに囲まれて、大満足の1日を過ごすことができました!刺激あり癒しありのダイナミックな冒険をしに、是非一度、阿蘇中岳を訪れてみませんか?
阿蘇山中岳【あそさんなかだけ】
阿蘇山公園道路通行時間 (阿蘇山西駅にある火口へ向かう入り口)
・夏季期間:3月20日~10月31日
午前8:30~午後6:00 (ゲート閉門時間 午後5:30)
・秋季期間:11月1日~11月30日
午前8:30~午後5:30 (ゲート閉門時間 午後5:00)
・冬季期間:12月1日~3月19日
午前9:00~午後5:00 (ゲート閉門時間 午後4:30)
※火口の規制状況については、HPで随時確認できます
Web:http://aso-san.com
住所:熊本県阿蘇市一の宮町宮地
草千里ヶ浜【くさせんりがはま】
Web:http://aso-san.com/map/kusasenri/
http://www.aso-geopark.jp/geosites/geosite03.html
住所:熊本県阿蘇市永草
おまけPHOTO
阿蘇山西駅の裏側にある「阿蘇山上神社」。古代から「神霊池」とされてきた中岳を御神体として祀っている神社だそうです
立ち昇る湯煙は中岳の神様そのものの姿
火口へのステーションとなっている阿蘇山西駅内には、現在の火山ガスの状況が分かるボードがありました
おみやげ物屋のおじさんの話によると、道の大きなデコボコは過去に火山の爆発で岩が飛んできた時にできた穴なんだそう
まるで生き物がうごめいているかのような…
どちらを向いても山・山・山
緑と赤、茶色のグラデーションが美しい
秋の阿蘇はススキでいっぱい。夕日の時間帯はとにかくフォトジェニックです。阿蘇の山々は、四季を通じて色々な表情を見せてくれます