沖縄の原風景のような空間が素敵な「星のや竹富島」。宿泊者だけが味わえるディナーコース「琉球ヌーヴェル」には、スゴ腕シェフが惚れ込んだ沖縄素材が満載。島育ちの私にとっておなじみの食材が驚きの変身を遂げていました!
(Text/泡☆盛子 Photo/西野嘉憲)
素朴な竹富島で味わう洗練された料理
石垣島から船で約10分の竹富島。白砂の道に昔ながらの赤瓦屋根民家が並ぶ景色は、石垣島育ちの私が見ても旅情を誘われる趣が存分にあります。
「星のや竹富島」は竹富島の東部にあり、約2万坪の広大な敷地に島の伝統を尊重してつくられたリゾート。客室はすべて琉球赤瓦の一軒家で、まるで暮らすように滞在できるのが大きな魅力です。
そして、私が「星のや竹富島」にステイしてもっとも感動したのがレストランのディナーでした。正直にいうと、「竹富島でフレンチの料理ってなんとなく場違いな気が……」なんて思っていたのですが、そう思った自分が恥ずかしくなるほど完成度が高く、まさに竹富島でしか食べられない料理の連続だったのです。
「星のや竹富島」のシェフを魅了した島食材
「星のや竹富島」の料理を監修するのは、総料理長の中洲達郎さん。フランス料理の巨匠、ポール・ボキューズにちなんだ「ボキューズ・ドール」という世界的なフランス料理の大会に、アジア代表として出場したスゴ腕シェフです。
中洲シェフは、竹富島でこれまで出合ったことのなかった島のハーブや野菜、魚、沖縄特産の豚肉や牛肉に大いなる刺激を受けたのだそう。
「島にはこんな素晴らしい食材があるのだからぜひとも生かしたい。沖縄の料理はチャンプルーや沖縄そばだけではないこと知ってほしい」という思いから、島の素材とフランス料理の技術を融合させた“新しい味”「琉球ヌーヴェル」を生み出しました。
世界の美味を知るシェフが、沖縄の食材にこんな熱い思いを持ってくれているなんて、島育ちの私としてはとても光栄です。
「星のや竹富島」では野趣溢れるカニが上品なアミューズに!
「星のや竹富島」の季節替わりのディナーコースは全8品。
八重山の伝統的な織物・ミンサー織りをさりげなくあしらったマットの上に、順を追って美しい料理が登場します。1品ごとにワクワク!
春コースの一品目(アミューズ)は「春野菜とガザミのブランダード ビスクと共に」。ブランダードは鱈とジャガイモを混ぜて作るフランスの郷土料理なのだそう。「鱈をガザミという沖縄でとれるカニに代えています」と中洲シェフ。ガザミ、もちろん知ってます。地元では味噌汁やボイルで食べることが多いおいしいカニです。どちらかというと味わいに野趣のあるカニが、こんな上品な料理になるなんてびっくり! ふわっと軽い口当たりであっさりとしたブランダードと、別で添えられたガザミのビスク(スープ)のしっかり濃厚な味わいの対比が見事で、初手からグッと心を掴まれました。
迷いまくってメイン料理は豚肉に
アミューズのあとは、冷菜、温菜、スープ、魚料理と続き、いよいよお楽しみのメイン! 肉料理は2種類から選べます。
まず1品は「牛フィレ肉のパン粉焼き 豆腐ようのベアルネーズ添え あかね芋のドフィノアと命草のサラダ」(+2000円)。
沖縄の代表的な珍味・豆腐ようを使ったソースにも惹かれましたが、豚肉文化の沖縄育ちゆえに、もう1品の「香草の香りをまとった豚ロース肉のパン粉焼き あかね芋のドフィノアと命草のサラダを添えて」に軍配が上がりました。豚肉大好きなんです。
アグー豚のロースはスッとナイフが入るほど柔らかく、噛むほどにじゅわ〜っと旨みが広がります。ジューシーなお肉にカリッとアクセントをつけるパン粉には長命草という島ハーブが入っていてかすかにほろ苦いのがいい感じ。命草のサラダに入っているドラゴンフルーツの甘みと引き立て合っていました。島の薬草やフルーツも、仕立てによってこれまでとは違う味わい方ができるのだと実感。
鮮やかなオレンジ色のドフィノアは、あかね芋という新種の芋を使ったもの。紅芋に次ぐ名産品として注目されているそうです。恥ずかしながら私は初めて知ったのですが、さすが中洲シェフ、いち早く取り入れているのですね。ほくほくとしてカボチャのような甘みのあるあかね芋、おいしかったです。
心豊かになれる「星のや竹富島」の料理
目に美しく、食べて美味しい上に新たな発見が満載で感動の連続だった「琉球ヌーヴェル」。
知っているはずの食材がまったく違うものに感じられるという体験を経て、物事を多方面からとらえることの大切さを教わりました。
ぜひ「星のや竹富島」で、島の空気の中であの料理を味わっていただきたい。
ちなみに朝食も、伝統料理を集めた重箱やゆし豆腐粥(各3500円、税、サービス料10%別)など島の味が揃っていておすすめです。
星のや竹富島 ダイニング【ほしのやたけとみじま だいにんぐ】
(宿泊者限定)
営業時間: 7:30〜10:30LO、12:00〜14:30LO、17:00〜20:20LO
定休日:無休
Web:https://hoshinoya.com/taketomijima/
住所:沖縄県八重山郡竹富町竹富
おまけPHOTO
「海老と玉ねぎのフラン」には、竹富島産車海老を使っています。
「マグロと牛のタルタル ビーツのエスプーマ」。ディナーコースには沖縄が誇る陶芸家・大嶺實清氏のやちむん(焼き物)を多用。
選べるメイン料理のもう一品、「牛フィレ肉のパン粉焼き 豆腐ようのベアルネーズ添え あかね芋のドフィノアと命草のサラダ」。
「ジーマミーのヌガーグラッセ ハイビスカスの香りに包まれて」。泡盛、八重泉の古酒を使ったクリームと酸味の効いたハイビスカスのソースを使用。