京都のお寺は歴史も雰囲気もとっても個性豊か。今回は、お寺=シブいところ、というイメージを覆すような、すてきなスポットをご紹介します。私は、初めて拝観したときからブルーのイメージに惹かれ続け…心を落ち着かせたいときや悩んだときにお参りにいきます。
青い蓮の襖絵があるお寺って、知ってる?
人気観光スポットが多い東山エリアに、「青い蓮の襖絵のお寺」があるのはご存知ですか? 襖いっぱいに躍動感をもって描かれた蓮の葉や、赤や黄、白の蓮の花は、なんともモダンな印象。ガイドブックやSNSで、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
お寺の名前は「青蓮院門跡」。平安時代に最澄が比叡山延暦寺に作った僧侶の住坊・青蓮坊が起源で、代々皇族や貴族が住職を務めてきた格式の高いお寺です。『愚管抄』の著者として知られる慈円や、浄土真宗の開祖・親鸞聖人ともゆかりが深い場所なんですよ。
ご本尊は、熾盛光(しじょうこう)如来。天台宗ではその化身である不動明王が信仰されていて、古くから青蓮院門跡には「青不動」が祀られています。有名な国宝の青不動明王二童子像は秘仏とされ、今は山の上の将軍塚青龍殿に祀られています。
青蓮院門跡 の庭の緑、襖絵の青で安らいでいく心…
そんな青蓮院門跡では、聖なる「青」にたくさん出合えます。まず拝観受付から建物に入ると、華頂殿という客殿が。緑の苔やモミジが美しい庭園を、パノラマビューで楽しめます。庭を眺めながら静かに座ったり、お抹茶をいただいたりすると、心が落ち着きますよ。
この華頂殿にあるのが、青い蓮が描かれた襖です。アーティストの木村英輝氏が手がけたもので、極楽浄土を表現しているとか。なんて大胆で、それでいて気品あふれる構図なのでしょう。面によって色使いや柄が違うので、思わず見入ってしまいます。
この襖絵はとても貴重な作品なのですが、華頂殿ではこうして間近に拝観することができます。蓮の葉の色の濃淡や独特の曲線、庭とのバランスに、うっとりしてしまうこと間違いなし。襖を動かしたり、触ったり、体が触れたりしないように注意して拝観しましょう。
蓮のまわりに集まる、こんな生きものたち!
青い蓮のまわりには、たくさんの生きものたちが集まっています。蓮のみの面もあれば、1種類の生きものが数体いる面、数種類の生きものが共演している面など、変化に富んでいるのがユニークです。この面には、表情やポーズもさまざまなカエルが…
この面ではトンボを発見。羽の美しさまで描かれていて、今にも動き出しそうです。そして実はもう一種、違う生きものがいるのはおわかりですか? 心を落ち着けて見ると、蓮の花の中に…? 極楽浄土では、いろいろな生きものが仲良く暮らしているんですね。
見落としそうになるような部分でも、カニを見つけました。なんだか表情もかわいいですよね。このほか、親子らしき亀がいる面などもあり、実に変化に富んでいます。それぞれじっくり眺めながら、自分のお気に入りの面を見つけるのも楽しいですよ。
青蓮院門跡 は見ごたえたっぷり
華頂殿を拝観したら、小御所から本堂、宸殿まで、ルートにそって歩きましょう。皇室とゆかりが深く、江戸時代には後桜町上皇の仮御所になったこともあるこのお寺は、建物もそのディテールも雅やかです。建物内のあとは、緑あふれる庭園内を歩くこともできます。
迷ったときに浸りたい、青い世界
名前からも、仏様からも、襖絵からも、「青」を感じられるこちらのお寺。青不動明王は、身に降りかかる災いをおさめたり、自分の弱い心を打ち砕いたりすることに力を貸してくださる仏様だそうです。お参りしたあとは、明日への活力がわいてくるかもしれません。
(Photo & Text/深谷美和)
青蓮院門跡【しょうれんいんもんぜき】
拝観時間:9:00~16:30(最終受付)※夜間特別拝観は別途
定休日:無休
Web:http://www.shorenin.com/
住所:京都府京都市東山区粟田口三条坊町69-1
おまけPHOTO
境内はモミジの名所でもあります。秋の紅葉もお楽しみに
拝観券にもブルーが。通常拝観は大人1人500円です
華頂殿から観賞する相阿弥の庭は緑が鮮やか。参拝者用のノートも
建物の間をつなぐ廊下も雅やか。時代劇に出てきそうな雰囲気です
建物内のじゅうたんもブルー。境内は広いので時間には余裕を
境内には天然記念物のクスノキが5本あります。樹齢は800年とか!